140話 本気で人と向き合うと自分が変わる

最近、一緒に株を始めた仲間がいる。彼が株を始めるまで、彼は現状を求め続けていた。

私は、そこで彼の変化を求め続けていた。

 

人は変化を恐れる生き物だ。

何かに一度契約をすると解約することを嫌がる。

例え格安SIMが安くても、値段が高いキャリアの携帯で契約を続ける。

一度保険に入ると、出るのが怖くて、保険料を払い続けようとする。

真面目に仕事を頑張るように教えられればなかなか副業というものを始められない。

 

人は変わらない、だからこそ変えようとしてくれる人の存在はとても重要だ。

 

私もオーストラリアにいた時だけでも何人もの人生を変えてくれるような人に出逢った。

その人たちは、本気でぶつかりにに来ている。

マウントを取りたいとか、嫌味で言い負かしに来るという人は少なくともいなかった。

 

だからこそ、その気持ちを蔑ろにはできない。人を変えるには本気で向き合わなければいけないということを痛いほど学んだ。

人と向き合うには、エネルギーがいる。根気もいる。自分との戦いだ。

 

 

私が本気で人の気持ちを変えたいと思ったのは、大学時代の話だ。

 

高校からの一人の親友Mがいた。

大学まで付属の高校だったが、私は訳あって付属の大学に進学せずに受験したため、他の友人たちとは違う大学に通った。

 

親友Mは付属の大学に行った。

私は時々、高校時代の友人と会うことがあり、たまたまその親友Mが家に引きこもっているという話を耳にした。理由は親の不倫による離婚だった。

 

Mに連絡したが、返信がなく、私はいてもたってもいられず、友人の車で親友の家まで向かった。

インターホンを押すと、父親が出てきた。

 

「残念だけど、Mは今家にいないんだ。」と言われ、しぶしぶ帰ろうと思い家を見ると、家の2階のカーテンがさっと閉まるのが見えた。Mの部屋のものだった。

「家にいたんだ。。」 

一緒に行った友人と話し、居留守されてるんだから今日はもう帰ろうということで帰った。

 

私は、どうしても諦めきれずに、また1年後の同じ日に友人とMの家に向かった。完全にMとは連絡がとれなくなっていた。

 

また父親が出てきた。

「しばらく家にいないんだ。ごめんね」

父親は悲しそうな顔をしていた。Mは気づいたら失踪していた。

 

 

「生きてるのかなあいつ。。」と友人と話しながら、また収穫なしで帰った。

 

そして、また1年後にMの家に行った。

俺も一緒に行く友人もどうしても、親友がどこか遠くへ行ってしまうのに耐えられなかったのだろう。

 

また父親が出てきた。

「あいつはいない。誰にも会いたくないだろうからもう来ないでくれ。」 そう言われた。

 

よくも悪くも、私は諦めが悪かった。自分の正義こそ正しいと思い込んでいた。

俺は間違っていたのだろうか。。と悲しくなり家に帰った。

 

 

そして1年後、もう来るなと言われたことすら、忘れてまたMの家に友人と向かっていた。

「何回くるんだ俺ら、そろそろ警察呼ばれてもおかしくないよな。」

と話しながらインターホンを押した。

 

ドアが、ガチャっと静かに開いた。

 

そこには、何年振りかのMが立っていた。

 

私達は驚いた。自分から来ておいてなんだが、殺されるんじゃないかと一瞬思った。

Mは小さな声で言った。

 

「待ってたよ。来ると思ってた。」

 

私は 「出てくるの、おせーよ。」と言い笑った。

 

Mは、 「少し話そうか。」 といい、すべてに吹っ切れ、真面目に働いて生きていくことを決めたようだった。今まで何があったかを話してくれたMの顔は笑っていた。

 

私は、自分の選択が間違っていなかったと思えた。正直、かなりエネルギーを使った。

もはや相手の気持ちなんて考えていなかったんじゃないかと思う。

 

自分が本気で相手のためを思えば、それが本当に重要な事なら、相手の気持ちをも覆せるのではないか、とても大きな変化を逆に与えられた1日だった。

 

 

Mは生きている。そして、また会うことが出来るだけでいい。

たまに会っても、いつも会っているかのように話せるのが親友なのではないか。そう感じた。