それは、お金の価値を見失うことに気が付いていなかった。
お金と言うのは、状況に応じて実は価値が変わる。
実際には変わっていないが変わったという錯覚に陥るということだ。
具体的に言うと、お金を見る時に我々はその割合を重視している。
①100円のキャベツより、98円のキャベツを追い求める主婦ならわかると思うが、その差額2円の割合はおよそ2%ほどだ。その2%をとても重視する。
②100万5000円の車と、100万4998円の車について、差額は同じ2円だが、その差額の割合は0.0002%ほどであり、割合はかなり小さい。
差額は同じ2円だが、状況によってこの差額の感覚はまったく違う。つまりお金の価値は状況で変わっていることになる。
1時間がんばって仕事をしてもらった1000円と、1時間散歩をしていてたまたま拾った1000円の価値も同じように違う。
もらうべくしてもらったものと、たまたま手に入った物。
たまたま手に入ったものの価値は低く見積もられる。
カジノも似たような原理がある。
私は、毎回カジノに15万円(日本円で)ほどを持ち歩いてカジノに行っていた。
カジノは面白いもので、バカラやルーレットなどゲームによっては、勝てばすぐに金が2倍になる。
1万円賭けて30秒ほどで2万円になる。
30秒で得た2万円に実は自分が汗水たらして働いた1万円が含まれているのだが、そのゲームに入った時点で、私の1万円は、たまたま拾った1万円のようなカジノチケットに変わってしまう。
自分のお金は、使ってしまうとすぐにカジノマネーへ脳内で返還される。
まるでドラゴンクエストのゴールドのような感覚で、使えるようになってしまう。
その持っていたお金が無くなると、ふと我に返る。
そして、次の週には、失ったお金を取り返そうとする。
これがギャンブル依存症だ。
「無くなったお金を取り返そう!」という考えが出た時点で中毒の始まりだ。
だがそれに自分ではなかなか気づけないのも不思議なものだ。
私は持っているお金が全部なくなっても気づけなかった。
誰よりもひもじいような生活をして、夜道を一人で彷徨っていてもお金のことから離れられなかった。
お金に執着している限り大事なものを見落としている。
あなたは「お金より大事なものは?」
と言われて答えられるだろうか?
本当にお金が大事なら、最初に出した車の例えにあるような小さな差額でも大事にしないといけない。
だが、ほとんどの人はお金の価値が変わることに気づいていない。
これに気づけるようになった時に、また一歩、賢者に近づくのではないだろうか。