25話 見えない幻想を意識できず、踊らされる人々

先日患者さんでこんな人がいた。

 

「いつも眠剤を飲んでいるけど、なくなったのでこの薬を出してほしい。」といって差し出してきたのは、コレステロールを下げる薬だった。

なんでこんなものを飲んでいるんだろう。。。と不思議に思ったがすぐに分かった。

 

自分が以前その患者さんへ渡した眠剤と、外観がものすごく似ているコレステロールの薬だ。

 

この人は、見た目が似ているコレステロールの薬を眠剤だと勘違いして寝る前に飲むとよく眠れるという。

完全にプラセボ効果だろう。

コレステロールの薬で眠くなることはまずない。

 

ここで噛み砕いて考えてみると

自分の思い込みが強ければ、正しいかどうかとか事実がどうであれ自分の出した結論に近づけようとするのが人間なのか。

ただ柔軟性が足りないだけなのかは分からないが、思い込んだらそれに人は向かっていく。

 

もう一つ近い経験がある。

薬にはオーソライズジェネリックと言うジェネリックがある。

一般的なジェネリックは、特許が切れた薬の主成分が同じで添加物や製造方法に違いがあるが、

 

オーソライズジェネリックは、主成分、添加物、原料、製造方法などもはやすべて同じで先発となんら変わりはない。変わるとすればパッケージの名前だけだ。

 

患者さんでジェネリックがどうしてもいやだという人がいた。

そこで「オーソライズジェネリックっていう、パッケージの名前が違うだけで、先発品とまったく同じ薬がある」といったが、断られた経験がある。

オーソライズジェネリックは中身が同じで値段が安くなる。ものによっては半分くらいの値段になるものもある。

 

それでも先発がいいというのは、その人のプライドゆえか、こっちの説明を効く気がないのか分からないが、本人の財布としてみれば損をしているのは確かだ。

 

100円で買えるものをわざわざ200円出して買うことがあるか、その意識がないという風に自分には見えてしまった。

 

2つの話で共通なものは思い込みが自分の行動を左右している。

極論で言えば、1つ目の例はいい例で、2つ目の例は悪い例だ。

 

人間は思い込んだらそうなる、自分がダメで努力できないと思っていればそうなる。頑張ることを忘れ、あきらめる習慣がついてただデタラメに歳をとってしまう。

 

自分は金持ちだ、なんでもできると思っていれば不思議とお金が集まってくる。

 

人生で、新たなものと直面した時に、以前の自分の固定概念と言う壁が邪魔をしに来る時がある。

その壁を打ち砕けた人が、柔軟に学び、素晴らしい豊かな世界への1歩を歩みだすことが出来る。

不思議とそれを知らない年上の人が多いのを見ると、時間の流れについて改めて考えさせられる。