革命を起こすなら2人目についてきている人がいるか、確認する必要がある。
オーストラリアのGattonという村の大きめの10人用シェアハウスに住んでいた時の話
一時帰国で日本に帰らないといけない用事ができ、日本に1週間ほど帰ったことがある。
私は部屋に住まないまま払うお金の余裕もなかったので、「一旦シェアハウスから退去するから、帰国後に部屋が空いてたらまた住ませてほしい」 と家のオーナーに伝え、持っていた車を友人に預け日本へ帰国した。〈オーストラリアでは家賃は基本週払いだ。〉
一週間後、オーストラリアに戻ってきてすぐオーナーに連絡した。
「お前が住んでいた部屋にドムというドイツ人が入ったから、そいつと2人部屋にして使ってくれ。」
オーナーはそれだけ私に伝えた。
「どんな奴だ、ドムは」と思いながらシェアハウスに向かい、自分が前に住んでいた部屋に着くとドムというひげを生やした長身の兄ちゃんがいた。
愛想が悪いのか人見知りなのか、そっけない態度でドムは私に言った。
「今日まで俺は一人部屋として過ごすことになっている、オーナーにもそう言われている。
彼女も来るから今日はどこか他で寝床を探しな。」
私は疲れていて、これ以上なにか言い返す気力もないので、友達に預けていた自分の車をシェアハウスの駐車場に停めて寝ることにした。
狭いマツダのデミオの車の中でシートを倒し、すやすや眠っていると、誰かが車の窓を叩いている。
「誰だよおい。」と思いながら湿気で曇った窓を腕で擦ると男の人が2人立っていた。
警察だった。。時計を見ると朝の3時だ。
車を降りると警察は言った。
「起こしてすまない、聞きたいことがある。君はここの住民か?」
住民だけど今は住民じゃないややこしい状態だが、「とりあえず住民だよ、訳あって車で寝させられてる。」 と私は答えた。
警察は「昨日この家の中で暴行事件があった。何も知らないのか?」
自分は何も知らないと答え、すぐに家の中へ向かった。
俺の大事な仲間たちは大丈夫なのか? そう思いながら。
家の中はめちゃめちゃになっていた。瓶が割れワインが床に散乱していたり、床には血が垂れていて、壁に備え突きの器具が落っこちていたり、電子キッチンが割られていたり、テーブルが壊れていたりともうぐちゃぐちゃだった。
シェアメイトは全員部屋にいて、何人かは泣いて居る。
聞いてみると、昨日家でフランス人とイタリア人が計20名ほどで家でパーティをしていて、フランス対イタリアで乱闘になったらしい。チームイタリアの2人は家のシェアメイトだった。
なんとも面白そうで、それを見れなかったのを後悔した。
オーナーも来て警察と話をして、今日はとりあえず寝て後日冷静になってから話をしようと言いオーナーはぶちぎれながらも自分の家へ帰って行った。
自分も車に戻って一夜を過ごし、家の中に入ると改めて部屋の荒らされ具合に気づいた。
自分の身体は勝手に掃除を始めていた。
自分はこの事件になんの関係もない、もはや家にもいなかった。でも自分が住む家なんだから掃除することに抵抗はなかった。
次々と家のメンバーが起きてきて、何をしているのか?と一人でせっせと掃除をする私に聞いてきた。
だが、誰も手伝わない。
「自分は関係ない、汚した奴が掃除をするべきだ。」
すごい気持ちはわかる。自分も昔はそう思っていたからだ。
「誰も掃除しないと、部屋は汚いままでみんな嫌な気分を過ごす時間が長くなる。自分が住んでいる家なら自分で掃除することに、疑問はないはずさ。みんなが人のせいにして任せっきりだと何も始まらない。」
聞かれる度にこう答えていた。
イタリア人の女の子が私の行動を見て掃除を手伝い始めた。
「私達が汚したのに、掃除してるなんて、ほんとにあんたは頭がおかしいわ。」そう言っていた。
気が付いたら部屋のみんなが掃除を手伝っていた。
噛み砕いてみてみると
自分一人より、2人いたからみんな掃除がしやすくなったのかもしれない。
部屋はだいぶきれいになった。壊れたものは治らないが散らかったところは綺麗に出来る。
掃除が終わるとドイツ人のドムが私に言った。
「君には本当に申し訳ないことをしてしまった。こんなにいい人間を適当にあしらって車で寝かせてしまって本当にすまない。君が困ったら私が必ず力になる。アーメン」
まじめだなと思いながら聞いていた。
そして、その日の夜にオーナーが来た。
「部屋の子が知らせてくれたんだよ、掃除の為に業者呼ばなくていいよ。住んでないのに掃除してる変わり者がいるからってね。これはお礼だよ。」
そう言い、、私に家賃1週間無料でいいということに加え、莫大な量のお菓子をくれた。
「別に感謝されるためにやった訳じゃない。当たり前のことをしただけだが、美味しくいただくよ。」
と返事をし、お菓子をシェアメイトみんなに分けた。
掃除を始めたのが俺ってだけであって、掃除したみんなの手柄を俺一人がもらうのはお菓子な話さ。そう思いながら。