☆119話 小さな日本の構造は、あらゆる所で生じている。

周りが思っている常識は必ずしも正しいわけではない。

 

私が薬学部で留年候補から、成績トップになるまでの話。

 

薬学部は一般的な4年制の学部とは少しシステムが違い、1科目でも落としてしまい、再試でも受からないとそこで留年が決まるという現実がある。

 

これはもうどうしようもないが、多くの者が留年と言うものを恐れていた。

 

留年すれば、学年が変わらないまま同級生は上の学年に行く。

ということは一気に友達は消える。次の年から授業も一人で受けないといけないかもしれない。

 

それに金銭的な問題も大きい。

表面的に見ると学費が200万円以上軽く吹っ飛だけに見えるが、新しい教科書なども買わされる。

それに加え1年分就職も遅くなり、給料も数百万円分の機会ロスが発生する。更に、退職金関係でも1年分のロスで影響も出てくる。

 

 多くの人が留年を恐れる。先輩たちに留年しないためにはどうすればいいのかと聞くとみんな決まってこういう

「過去問を手に入れてやればいい。」

 

これは先輩たちの中でも部活の会員を集めるために、過去問を印刷用に問題を覚えて作ったり、授業の小テストなどを保管していて後輩に配るという人もいる。

 

過去問を手に入れ、留年しない為に部活に入るというあほな奴まで現れた。

その中で私の友人は部活に熱中しすぎて留年した。

 

過去問は留年しないための必須アイテムとして、テスト前になると争奪戦が始まる。

もはや仮想通貨のような存在だった。

 

馬術部の過去問見せてあげるからテニス部のやつくれ!」とかそんなやりとりが行われる。

 

私も過去問競争に入っていた。過去問がないと留年する!

と思ってみんなの常識の世界にいたが、過去問がまったく役に立たない問題が出ることもある。

 

生薬という漢方の科目があるが、この科目の1ページ分に、記載された生薬の成分の構造を書けというえげつないテストが出たこともあった。

 

 ちなみに、みんながこの問題でしばらく悩んでいる中、私はこの部分を白紙で途中退出開始と同時に提出して、ドヤ顔で出た。

 

過去問がないと留年するというのは、間違いだ、もはや過去問に左右されてヤマを外すと、かえって再試になるパターンもある。

 

 みんなの常識から外れようと思い。私は授業をしっかり聞いてもはや自分で問題を作るようになった。

物心ついた時から過去問なんて見なくなった。自分で問題が作れれば問題は簡単に解ける。という構造に気が付いた。

 

それで常に成績トップ5に入るようになった。

そこで気づいたが、成績トップのやつらと話をするようになるのだが、彼らは過去問なんて見ないで独学で勉強をしていた。

 

今考えると、日本の構造に近い部分を感じた。

 

下の人達は過去問という情報に踊らされ、感情を一喜一憂させる。安心材料として渡される過去問は決して安心できるものとは限らない。

 

そして、上にいる人たちはそんなものに目もくれない。

 

情報に踊らされる下の人と、それをうまく利用する人、見向きもしない自分の生き方で高みの見物をする人。あなたはどこのポジションにいるだろうか。