☆お金の為に優しくするのは本当のやさしさじゃない。

お金の為に優しくするのは本当のやさしさじゃない。

まだオーストラリアでキャベツを刈っていた頃、自分のチームに新しい女の子が入って来た。

 

イタリア人のアントネッラという子で、そんなに腕は良くないがとても真面目に頑張っていた。

私の列の横で刈っていたので、私は丁寧にキャベツの刈り方や、効率的な動きについても教えてあげた。

 

アントネッラはみるみるうちに仕事ができるようになり、厳しいチームからも認められた。

 

私はチームを良くするためにも個人個人と仕事終わりに飲んだり、ご飯を共にしたりしていて、アントネッラとその彼氏とも仲が良かった。

イタリア人としてはとても誠実で真面目なカップルで、何か日本人に近いものを感じた。

 

「この人に仕事でお世話になった」というのを聞いた彼氏からワインや手作りのパスタをご馳走になったりしたこともあった。

 

 そんな中で、アントネッラとその彼がイタリアに帰るという話を聞いた。

荷物もだいぶ処理していて、車も既に売っていた。

 

 

農家の仕事は都市から離れた村なので、「俺が来るまで空港のある町まで送っていくよ。」と言った。

 

彼らは大いに喜んでいた。

その時住んでいた町は、空港があるブリスベン(オーストラリア第3の都市)まで車で休みなしで3時間ちょいはかかる。ガソリンを満タンにしても全然足りない距離だ。

 

それにバスに乗れば2人で15000円くらいと4時間近くかかる。

通常ピックアップと言って友達に車で乗せてもらったときでも1人4,5000円程払う。

 

私は、週6働いて、日曜日の朝4:30に彼らを自分の車に乗せてブリスベンの町へ向かった。

3時間かけて、無事に彼らを送り届けた。

 

すごくいい人達だったが、おそらくこれで、彼らと人生で会うことはもうないと思った。

 

この女の子には、真面目に頑張っていれば、仕事が多少できなくても見捨てないで教えようとしてくれる人がいる。ということを自分の行った行動から学ばせてもらった。

 

 

別れ際に、彼氏が「ピックアップしてくれて本当に助かったよ。ありがとう。」と言いながら5000円ほどの額を出してきた。

 

私は、一瞬受け取ろうとした。

 

彼らは俺がカジノ中毒でお金がほぼ無くて、仕事中に刈ったキャベツにドレッシングをかけて食べているのを知っている。

 

私は、「そのお金はオーストラリア最後の食事にでも使ってくれ。」

といい彼の腕を優しく突き返した。

 

この時は、「あぁ5000円・・・」という気持ちより、

お金の為に優しさを使いたくない。それこそが本当のやさしさだ、と思った。

 

きれいなお別れをした。

 

このまま眠い目をこすり、また3時間かけて田舎町へ帰った。

帰りに積んだ心の学びは、彼らと彼らが積んだ荷物を合わせたのよりずっと、重いものだった。